ブックタイトルHealth Manegement for Female Athletes Ver.3

ページ
184/200

このページは Health Manegement for Female Athletes Ver.3 の電子ブックに掲載されている184ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

Health Manegement for Female Athletes Ver.3

繰り返す自分に対して否定的な表現を繰り返しつつも,積み重ねてきたことへの肯定感を取り戻すことが徐々に多くなり「競技以外には何もないと言ったが,競技にかけてきた時間と努力は自分が取り組んできたことなのだ」というような表現も見られるようになりました.自分の身体感覚や感情に実感が持てないという状態は摂食障害の人には少なからず認められるものですが,カウンセラーが本人の表現を大切に扱い続ける中で,これらの感覚が徐々に輪郭をもって現れてくるようにもなりました.このように自分の感覚や気持ちとつながってくると,競技以外のことも徐々に楽しめるようになり,過食嘔吐も徐々に減っていきました.2年後,Aさんなりのペースで競技に復活し,自分なりに納得した競技生活を送ることができるようになりました.最後に「摂食障害にならなければ,これだけ充実した競技生活にはならなかったと思う」と話してくれ,治療は終了になりました.これらの経過を支えた家族や指導者,チームメイトの理解も大切な要素でした.アスリートの摂食障害の重症度は非アスリートと比べて軽いともいわれますが,以下に挙げるように難しい面もあるといわれています87).1 運動をエネルギー消費の一つの方法として,コーチや家族を喜ばせるために強迫的に行う.練習しないと不安,抑うつを生じ,太ると思う.また,練習できなかったり競技に出られないと自分自身の存在感を失う.2 病気を否認したり正当化するのを極めて巧妙に装い,症状さえ正当化する.無月経を競技のうえでは好都合であると言ったり,徐脈を「スポーツ心臓」と言ったりする.3「私からスポーツを取れば何も残らない」とアイデンティティの問題を生じ,練習を控えない.4 身体的にも強く,病気と診断される前により重症になっていることが多いなどこれらの特徴は,アスリートとして当然のトレーニングと摂食障害の境界を見えにくくさせるものであり,専門家をもってしてもしばしば診断を困難に182