ブックタイトルHealth Manegement for Female Athletes Ver.3

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概要

Health Manegement for Female Athletes Ver.3

症例:女性アスリートAさんが,監督から過食嘔吐を心配されて来談しました.Aさんは「監督の期待に添うように頑張りたくて(過剰適応)毎日努力を重ねてきたが(強迫性),成績が伸び悩み,ストレスを発散するために食べるようになってしまった.勉強はほとんどしてこなかったので,自分からこの競技を取ったら何も残らない(自己嫌悪).〇〇競技会でトップに立たなければ意味がない(完璧主義).競技以外でやりたいこともないし,自分が何を感じているかわからない(失感情).」と言いました.このようなアスリートは特殊ではなく,多くのアスリートの心性に近いものがあります.つまり,完璧主義や強迫性があったからこそ,また指導者の指導を素直に聞いてきたからこそ,トップのレベルにまで結果を伸ばしたともいえます.ある程度の競技力がつけば,競技にかける時間も自ずと増えるのも当たり前のことです(受験生が何十時間も勉強に費やすように).しかし,決して特殊ではないとはいえ,ボタンの掛け違いがどこかにあり摂食障害という形でこころがSOSを出していることには間違いありません.摂食障害になると,あがいてもどうにもならないという状態になったり,「アスリートとしての意識が足りない」と周囲から理解されず,非難され,孤立感が生じ,辛い状態に置かれていることも少なくありません.Aさんは,心療内科の薬物治療とカウンセリングを並行して開始しました.最初は「今日は何g増えた」と体重へのこだわりを持っており,「〇〇kgだといい結果が出せるのに」という体重中心の考えが頭を離れませんでした.〇〇kgになるために必死に食欲と戦い,1週間ほど頑張ると,今度はその反動で家にあるすべての食べ物をむちゃ食いしてしまいます.「またやってしまった」という罪悪感と,その後の過食ということを繰り返し,この反復から抑うつ的になり,競技の継続も難しくなりました.競技から離れざるを得なくなったAさんですが「私には競技以外何もない」という不安も過食嘔吐をさらに誘発していました.カウンセリングを重ねるうち,過食と嘔吐を181