ブックタイトルHealth Manegement for Female Athletes Ver.3

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概要

Health Manegement for Female Athletes Ver.3

先述のように思春期は親友の存在が極めて重要ですが,仲間経験自体が乏しい,ペア競技やライバル関係のような極端な二者関係,特殊な愛憎関係といった状況を競技環境がもたらすこともあります.女性に限りませんが,江田らは,思春期トップアスリートの相談事例を分析し,彼らが思春期を通常と異なる形で歩むという特殊な発達過程も明らかにしています79).c.成人期しっぷうどとう疾風怒涛の思春期・青年期を乗り越え,社会に出ていく時期です.自らのアイデンティティに確かな感覚を持つようになり,同僚や異性との間で,個別の深い「親密性(intimacy)」を求めるようになります.しかし,前述した独特の人間関係や生育環境により,十分な自我同一性の感覚が得られない場合があります.筆者らがアスリートから投げかけられた悩みを下記に例示します.・指導者の指示通りに生きてきたから,指示のない新しい環境が怖い.周囲と違うと感じ孤立してしまう.上辺だけの人間関係しか持てない.・競技を引退する不安が強い.競技以外やったことがないから「自分には何もない」と感じてしまう.・優秀だった競技成績が頭にあり,私が何でこんな仕事をしないといけないのか,バカバカしくなる(万能感が肥大し次なる世界になじめない状態と考えられる).・次の仕事でも完璧主義を求めて,やり過ぎとわかっていてもやめられない.上司からの理不尽な言動にもつい「はい!大丈夫です!」と我慢してしまう.アスリートとして身に付けた適応機制(環境に順応し,自身を守るシステム)が日常場面で重荷になりゆく時期ともいえるでしょう.競技で得る高揚感に比して,地味な日々に生きがいを見出せずに薬物やギャンブルなどで代替の高揚感を得ようとするということも,場合によっては起こりえます82).このように,女性アスリートにとっては心理発達過程が非アスリートと異なることがあり,今のこころの状態に至るまでのその発達過程を知ることが,自分を知るということにもつながります.175