ブックタイトルHealth Manegement for Female Athletes Ver.3

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概要

Health Manegement for Female Athletes Ver.3

b.「女性アスリートの三主徴」とは女性アスリートに多い健康問題については,国際オリンピック委員会だけではなくアメリカスポーツ医学会でも警鐘を鳴らしています.アメリカスポーツ医学会では,利用可能エネルギー不足,視床下部性無月経,骨粗鬆症の3つの疾患を「女性アスリートの三主徴」と定義しています(図4 7)46).以前は,この定義のうち利用可能エネルギー不足は摂食障害という定義でしたが,摂食障害という診断がつく前からの早期介入が必要であることから,2007年に定義が変更されています.過食症や拒食症などの摂食障害は,一般女性と比較するとアスリートで多く,特に10代のアスリートや審美系,体重-階級制競技に参加するアスリートで多いことも報告されています47).女性アスリートの三主徴は,日本では数年前から取り上げられるようになりましたが,この問題は,国際的にみると1990年代から警鐘が鳴らされています.この3つの疾患は独立して存在するものではなくそれぞれが関連し合っていますが,この三主徴のはじまりは,利用可能エネルギー不足と考えられています.利用可能エネルギー不足とは,「運動によるエネルギー消費量に見合った食事からのエネルギー摂取量が確保されていない状態」を指します.しかし,このエネルギー摂取・消費量をスポーツの現場で評価することは難しく,アメリカスポーツ医学会では利用可能エネルギー不足の第一段階のスクリーニングとして成人ではBMI 17.5kg/m 2以下,思春期では標準体重の85%以下を用いて評価しています.利用可能エネルギー不足が長期間続くと,脳の下垂体からの黄体化ホルモン(LH)の周期的な分泌が抑えられ,排卵がなくなります48).排卵がみられなくなると,もともと規則的にきていた月経が不順になり,この段階で利用可能エネルギー不足が改善されなければ,無月経になります.このため,普段から基礎体温を測定しているアスリートでは二相性から一相性の変化を示します(p11「基礎体温の測り方」参照).卵巣からは,エストロゲンとプロゲステロンという2つの重要なホルモンが分泌されていますが,エストロゲンは骨量と関連があり,無月経になるとエストロゲンの低下により骨115